【ギターの音作り】歪みの倍音と速弾きの関係性についての考え方

どうもギターを弾いているカールです。
今回のテーマはギターの音作りの中でも少し掘り下げて「倍音」について書いていこうかと思います。
ギターの歪みにおいてアンプ、エフェクターともに語られることの多い倍音ですが速弾きの際にどういう立ち位置なのか?
近年はどういう傾向なのかを筆者目線で語らせていただこうかなと思います。
音作りの参考にもなると思うので飛ばしながらでもいいのでよければ読んでみてください。
倍音とは何ぞや?
まずはざっくりしたところから行ってみましょう
【倍音】というワードはギターを弾いているとエフェクターのレビューやアンプの説明欄、はたまたピックアップの宣伝文句などなど…
どこかで目にしたことあると思います。
科学的、数学的な説明は筆者も無理なので引用しますと
倍音とは楽音の音高とされる周波数に対し、2以上の整数倍の周波数を持つ音の成分。1倍の音、すなわち楽音の音高とされる成分を基音と呼ぶ。 弦楽器や管楽器などの音を正弦波(サインウェーブ)成分の集合に分解すると、元の音と同じ高さの波の他に、その倍音が多数(理論的には無限個)現れる。 ただし、現実の音源の倍音は必ずしも厳密な整数倍ではなく、倍音ごとに高めであったり低めであったりするのが普通で、揺らいでいることも多い。逆に、簡易な電子楽器の音のように完全に整数倍の成分だけの音は人工的な響きに感じられる byウィキペディア(Wikipedia)
というのがちゃんとした用語での説明になるそうです。
まぁ読んでもいまいちわかりづらいと思うんで超かいつまんで簡単に言いますと
ギターの場合はハーモニクスというのが存在します。
ナチュラルハーモニクスの場合は12フレットなどを押さえずに軽く触れて弾くと元の開放弦のオクターブ上の音が出ます。
これが倍音です。12フレットの場合2倍音になります。
しかしギターのみならず様々な楽器で倍音は存在していますしギターの歪みにおいては常に倍音がなっています。
ナチュラルハーモニクスの場合は意図的に実音を鳴らさずに倍音のみを鳴らしていますが普通にギターを歪ませて弾いていても2倍音、3倍音が常になっています。
じゃーんとパワーコードでも単音でも弾いてもらえるとわかるのですが実音以外のキンキンした音やジャラジャラした音が必ず混じります。
それも倍音です。
つまり歪ませた状態の音自体がすでに倍音で構成されているんですね。
倍音成分が与える音作りへの影響
倍音自体はもっと調べると奥が深いので筆者の知識では完璧なことは書けませんがプレイヤーとして直感で感じているのは上記に書いたことが大体です。
弾いた音よりも高い音が鳴ってるくらいで変わりません。
さてここからはギターにおいて倍音が与える音作りへの影響について書いていきたいと思います。
この倍音の鳴っている帯域が多いか少ないかで歪みのキャラクターが作れます。
倍音自体は必ず発生するのでその帯域(成分)が多いか少ないかですね。
まずは簡単な目安として倍音が多い歪みと少ない歪みでどのような印象を受けるかを簡単にまとめていきます。
倍音成分が多い歪みの特徴
まずは倍音成分が多い時のいい部分を挙げていきたいと思います。
- ジャキジャキした歯切れのいいサウンド
- 明るくはっきりとした音像
- 1音1音のアタックがしっかりとわかる
- ナチュラルハーモニクスやピッキングハーモニクスが出やすい
というのが主な特徴かと思います。
基本的にはギターのアンプで言うところのプレゼンス、エフェクターのトレブルやトーンノブを上げた際に感じることが倍音成分の多さにつながると思ってもらって構いません。
メリットというわけではないですがギターらしいサウンドの特徴かと思います。
倍音豊かな歪みでのジャキジャキサウンドはコードでもパワーコードでもロックを感じさせてくれるサウンドになります。
明るくはっきりしたサウンドなのでベースやボーカルとの差別化にもつながり突き抜けるサウンドになるといえます。
また深く歪ませて低域をしっかり出したメタルサウンドでも倍音は非常に大事です。
3つ目に書いた1音1音のアタックはメタルにおいて非常に重要な要素の一つなのでしっかりと伝えるために倍音成分は不可欠です。
倍音成分を多くしているので当然ナチュラルハーモニクスやピッキングハーモニクスはしっかり出ます。
さて倍音成分が多いといいことはたくさんあるのですがやりすぎはもちろんいけません。
次は倍音成分が多すぎると起こる良くない特徴をまとめていきます。
- ピッキングノイズが乗りやすい
- 耳に痛い成分が出てくる
- ペラペラな音になりやすい
- コード感がなくなる
ピッキングノイズは弦がピックに当たった際に起きるものですが倍音が多いとノイズを拾いやすいです。低音弦側ではあまり影響がないもしくは立ちあがりのいいサウンドとして聞こえるかもしれませんが、高音弦特にハイポジションでは耳障りに聞こえることも多いです。
同じような部分で倍音は非常に高い音なので耳に痛い成分が増えてきます。
この2つは今回のメインでもある速弾きの音作りにも関係のある事なので覚えておきましょう。
コードバッキングはいい感じなのにアルペジオを弾いたら耳が痛いなんてことはあるあるです。
またトーンノブを上げていく感覚に似ているといいましたが倍音も増えていくと下の帯域が薄まって聞こえてペラペラな薄い音になってしまうことが多いです。
薄くなる一方で複数の弦で弾くコードが倍音のせいで分離感が悪くなり何を弾いているのかわからなくなってしまうなども倍音成分を増やしすぎた際には起こりやすいです。
倍音成分が少ない歪みの特徴
次に倍音成分を少なくした際の歪みの特徴を紹介していきます。
まずは多い時同様に適度に削った際のいい部分を紹介していきます。
- 弦本来の芯があるダイレクトなサウンドを出せる
- 太くて抜けのいいサウンド
- 音階がしっかりと伝わる
- ピッキングニュアンスの幅が広い
以上がざっくりではありますが倍音成分を少ない時の特徴をまとめてみました。
1や2での特徴はギター本来のサウンドを出すという点で非常に重要になります。
ダイレクトなサウンドで太く抜けるということはギターソロの際に理想的な音作りかと思います。
音階がしっかり伝わる理由は倍音成分は必ずしも弾いた音に対して2倍、4倍と同じ音階の倍音以外にも3倍音など他の音が混じります。
なので少ない方が本来の音階が伝わりやすいということになります。
ピッキングニュアンスについては倍音が多くても幅はありますが、ピッキングで倍音成分を作り出すことが可能なのでない状態から作ればよりピッキングニュアンスは広がりますね
そうじてフュージョン系のミュージシャンが倍音成分を上手く押さえて演奏している印象ですが近年はメタル系のミュージシャンも適度に倍音を削っている印象です。
さてそんな倍音成分を少なくすることで得れるものも沢山ありますがやはり少なすぎる、削りすぎると良くない面も出てきます。
- こもって何を弾いているかわからない音になりやすい
- コードの分離感が悪い
- ドラムのシンバル等金物に負けて抜けてこない
- 良くも悪くもデジタル臭くなる
倍音成分は多い時にも書きましたがエフェクターのトーンノブに近い働きをします。
トーンノブを下げすぎるとモコモコになって何を弾いているかわからんくなる、ということが倍音成分を少なくしすぎた際にも出てきます。
このモコモコとしたこもったサウンドもクリーンであればいいのかもしれませんが歪みの場合はコードでも分離感が悪くなり倍音成分が多すぎた場合とは違った角度でなにを弾いているかわからなくなってしまいます。
またギターの高音域の成分はドラムのシンバルと近い帯域にあります。
倍音成分が少なすぎるシンバルの倍音に負けてギターらしさがなくなってしまうことがあります。
筆者の経験ですとシンバルのピッチにつられて自分が何弾いているか分からなくなることがありました。
またギター本来のおとが出るのはいいのですが倍音成分が少ないとキーボードなどの楽器に近い音色になってしまいデジタル臭く感じるかもしれません(事実意図的に倍音成分を削ったりするミュージシャンはアナログ機材ではなくデジタルのマルチエフェクターなどで音作りをしていることが多いです。)
時代によって変化してきた速弾きにおいての音作り
さてここまでギターにおいての倍音とは何ぞや?音作りにおいてどのような影響があるのか?を筆者目線で簡単に解説してきました。
ここからは本記事のタイトルにもあります「速弾きにおいての音作り」についてまとめて行こうかとおもいます。
メタル、ロック系での速いリフや速弾きでも倍音は非常に重要になります。
そこでここまで紹介した倍音の多い時、少ない時の特徴をもとに80年代の速弾き全盛期から近年の速弾きギタリストの音作りを交えて筆者の思う速弾きの際の音作りのポイントを紹介していこうかと思います。
まずは速弾き全盛期から近年の速弾きギタリストの音作りの変化を紹介していきます。
80年代のシュレッド全盛期のギタリストの音作り
さてまずはシュラプネルレコードという速弾き専門レーベルを筆頭に速く弾くという行為自体が人気絶頂だった80年代の音作りの傾向から見て以降かと思います。
上記に書いた倍音成分の多い少ないで分けるのであれば80年代の速弾きを専門に弾いていたギタリストの多くは倍音の多い音作りをしていました。
多い時のいい部分だけであればいいのですがどちらかというと倍音が多すぎです。
線の細い倍音マシマシサウンドです。
この場合の倍音きつめのサウンドの原因は主に歪ませすぎです。
とにかくハイゲインに飢えていた時代なのでアンプでめっちゃ歪ませてそれと同時に倍音成分が増えていきエフェクターでブーストしてそのうえに輪郭と奥行きを出すためにコーラスをかましてます。
とにかく歪んでいた時代ですね。
2010年以降の速弾きギタリストの音作り
90年代以降速弾きという行為が下火になりましたが2000年代から新しい世代の速弾きギタリストが頭角を現し2010年代以降はネットの普及とともに多くの速弾きギタリストが活躍しています。
そんな新世代の速弾きギタリストの音作りの傾向はズバリ倍音をバッサリカットしたモコモコサウンドです。
7弦ギターや8弦ギターを使用した楽曲も増えてきたのが音作りに関係しているのかと思いますが低音弦の音程をキープするために余分な倍音成分を排除しています。
また新世代の速弾きギタリストの多くがレコーディングでもライブでもアンプシミュレーターを使用しレコーディングの際に使用した音をそのままライブでも使用しています。
アンプシミュレーターは近年ものすごい勢いで進化していますがそれでもデジタル臭さが残ります。そのデジタル臭さがどこに出るかといいますと高音域から超高音域、倍音成分です。
デジタル臭い部分を削りリアルなアンプのサウンドを再現しようとしているのも倍音成分の多い帯域を削っている理由の一つかと思います。
ハイゲインであることは80年代と変わらないのですがアンプシミュレーターでギターの倍音成分の帯域をバッサリカットしてリードの際も抜けを意識した中音域のみのサウンドを狙っています。
モコモコと極端に表現していますが倍音が全くないわけではなくピッキングでの自然な倍音感や低出力のピックアップの使用で自然な倍音感は残っています。
80年代の速弾き全盛期とはまた違った音作りが近年のギタリストの音作りの傾向かと思います。
実際に速弾きの際はどんな音作りをするのがいいのか?
時代の移り変わりと音作りの変化についてざっくりと紹介しましたが実際に音作りするのであればどうするのがいいのかをここからはまとめていきます。
基本は倍音少なめでいい
80年代の倍音マシマシな感じもかっこいいのですがどうしても余分な倍音が多すぎて正確なピッキングをしても何を弾いているのか分からなくなってしまうことが多いです。
なので速弾きの際は少しモコモコするかな?くらいの設定でいいと思います。
最初は気になっても弾きこんでいけば慣れると思います。
その分ミスが目立ちますがモダンギタリストたちはそれすらも圧倒的な技術で補っているわけですね
速く弾くというのが目的であれば余分な倍音成分の出る帯域はバッサリカットしてダイレクトなサウンドを作る方が筆者はいいと思っています。
倍音は結構簡単に足すことができるので、あまりにモコモコしているのであれば足せばいいだけです。
アンプシミュレーターであれば16khz以上は基本カットしてさらに削っていくイメージ
音の傾向にもよりますが16k以上はそもそも人間の耳で聴きとるのが難しい帯域ですので当然いりません。
速弾きをする際はそこからさらに削っていく感じです。時と場合によってですが10khzあたりまではがっつり削ってもいい場合もあります。
もちろん使用しているギターやアンプのモデルによって変わるのとあくまで筆者の個人的見解ではありますがアンプ自体でしっかり出しておいて後からEQで多めに削っても聴感上はそこまで違和感はないと思います。
レコーディングでも結構削られているのでアンプシミュレーターでそれを再現してしまうイメージです。
ギターに必要な帯域だけをしっかりと残して弾く方が速弾きは伝わりやすいです。
歪み量は多くても問題ありません
80年代の音作りの際にも書きましたが歪み量とともに倍音成分が増えていくのですがEQで削ってしまえば問題ありません。
アンプ自体は出せる帯域を目いっぱい出してあげた方が良さが出るのでアンプのイコライザーというよりは実機であればコンパクトエフェクターでアンプシミュレーターであればアンプブロックの後にイコライザーを置いて調節するのがいいと思います。
ピックアップの選択で意図的に倍音を増すこともできます。
また音作りとは別ですがシングルコイルを選択した場合自然な倍音成分が出るので意図的に高音域を削ってもこもらずダイレクトなサウンドになる印象です。速弾きを邪魔しない自然な倍音なので速弾きする方でもシングルコイルを使用している方は多いです。
ハムバッカーでもコイルタップして意図的に倍音を鳴らすことが可能なので多めに削ってもピックアップの選択によっては倍音を多めに出すことは可能です。
近年ピックアップも進化していますのでそちらも注目してみる事をおすすめします。
人それぞれの好みですが倍音成分に注目した音作りは重要です。
さて今回はこの辺で終わりにします。音作りの話は長くなってしまいますね。
基本的には好みの世界なのでどんな音でも構わないと思いますがアンプの3バンドEQだけでなくプレゼンスノブやコンパクトのEQで倍音を調節してあげることは速弾き以外でも非常に役に立つと思いますのでいままであまり気にしていなかった方は倍音に注目してみてください。
音作りや機材に関しての記事は他にもありますのでよければそちらも読んでいただけると嬉しいです!
それではまた次回!
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